コラム

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2025.10.14 看護師

糖尿病三大合併症 『しめじ』とは?

糖尿病を放置していたり、血糖値が高い状態だと、全身の様々な合併症が進行してしまいかねません。今回は糖尿病の合併症に関する解説です。

糖尿病三大合併症 『しめじ』とは

・・・糖尿病によって起こる、細く小さい血管の合併症です

タイトルを見て、何のこと?と思ったかもしれません。食べるキノコの話ではなく、しめじ』とは『糖尿病三大合併症』を覚えるときによく使われる語呂合わせです。
糖尿病で長期にわたり血糖値が高い状態
だと、体の特に細く小さい血管がダメージを受け、やがてその部位に障害を来すことが分かっています。その部位とは神経腎臓です。
それぞれの頭文字をとって『し・め・じ』ということですね。
この3つの合併症は糖尿病がある人に特有に起こることが知られています。眼の検査を受けたら糖尿病の合併症が見つかって、未治療の糖尿病であることが分かったというケースもあります。
次は『しめじ』について、それぞれ解説します。

 

①し・・・神経の合併症 【糖尿病性神経障害】とは

全身の末梢神経の働きを低下させる、早くに進行する合併症

人の体の神経とは、中枢神経系(脳や脊髄)と末梢神経系(感覚神経・運動神経・自律神経系)に大別されます。このうち糖尿病性神経障害によって主として影響を受けるのは末梢神経系の働きです。
糖尿病性神経障害の中でも特に両足先の感覚神経障害は他の糖尿病合併症と比べて早くに進行が始まる可能性があり、糖尿病の管理において重要なポイントとなっています。しかし、発症初期にはほとんど自覚症状がなく、例えば「両足先のしびれ感」や「足の裏に紙をはっているような感覚」や「砂利を踏んでいるような感覚」などのようなハッキリとした症状を感じる頃には、ある程度まで神経障害が進行している可能性があります。

さらに進行すると、発汗の異常(汗をかき過ぎる・汗が出にくい)/胃や腸の調子が悪い/脈が速くなるなどの自律神経障害や、転びやすくなったり歩きにくくなるなどの運動神経障害が出現します。感覚神経障害が進行して最終的に足先の知覚、痛みさえも感じない状態になると、足の壊疽(えそ)の危険性が高くなります。

当院では足の感覚神経の検査(神経伝導速度検査)を定期的に実施して診察に役立てています。また、必要な方にはフットケア資格を持つ看護師による足の観察・問診・フットケアを通して、足の合併症予防に努めています。

②め・・・眼の合併症 【糖尿病網膜症】とは

「目が見えているから大丈夫でしょ」はマチガイ。
放置すると、ある日突然目が見えなくなる可能性のある合併症

網膜(もうまく)とは、眼の奥にある神経の膜のことで、人がものを見る時に欠かせない役割があります。長年に渡って血糖値が高いと、網膜に酸素や栄養を運んでいる小さな血管がダメージを受け、次第に眼の機能が障害されていきます。これが糖尿病網膜症です。

糖尿病網膜症を発症すると、網膜の血管が痛んで小さな出血が起きたり、眼の内部に「白斑」というシミができたり、眼の内部に水がたまったりします。これは糖尿病網膜症の初期~中期にあたる症状の一例ですが、それでも自覚症状が無い場合がほとんどです。いつも通りに目が見えているので、合併症の進行に自分では気が付かないのです。糖尿病網膜症がさらに進行すると、ダメージを受けた血管の代わりに新しい血管が作られはじめます。(「新生血管」といいます。)しかし、この「新生血管」は未熟で弱く、破れて出血を起こし、視力障害や失明に至るケースがあります。ここまで進行すると、物がゆがんで見える・視界が黒くなるなどの自覚症状が出ます。

糖尿病網膜症の検査は眼科で受けていただくようお願いしています。当院では糖尿病患者さんに眼科受診をしていただくよう定期的に声をかけています。糖尿病連携手帳をお渡ししていますので、当院と眼科での検査の両方の記録に利用してください。

なお、糖尿病網膜症があると、眼に負荷がかかる運動は禁忌となる場合があります。はじめて糖尿病と診断された方は運動を始める前に必ず眼科受診をお願いします

③じ・・・腎臓の合併症 【糖尿病性腎症】とは

早期に進行を食い止めたい 腎臓の機能が低下する合併症

腎臓には「血液の老廃物をろ過して尿を作る」「赤血球を作るためのホルモンを分泌する」「体内の水分量や電解質のバランスを保ち血圧を調整する」などの働きがあります。長年に渡って血糖値が高い状態が続くと、腎臓の細い血管が障害され、腎臓の働きが低下します。これが糖尿病性腎症です。糖尿病性腎症の発症には、糖尿病の発症からおよそ10年以上かかるとも言われていますが、すでに他の糖尿病合併症の進行が認められる場合や、高血圧や喫煙歴がある場合などは糖尿病性腎症の進行・発症にいっそう注意する必要があります。

糖尿病性腎症も発症初期にはほとんど自覚症状はありません。進行するとむくみ・息切れ・食欲低下などの症状が出始め、貧血や心臓の機能障害などを起こし、やがては腎不全に至ります。腎不全になると透析療法が必要になります。

当院では血液検査や尿検査によって腎臓の機能を評価しています。また、必要な方には管理栄養士が腎臓の状態に応じた食事指導を行っています。

まとめ

糖尿病三大合併症はいずれも初期には自覚症状がなく、基本的に一度進行すると元の状態に戻りません(合併症が初期の段階なら治療することで改善する場合もある)。
このため、自覚症状の有無に関わらず早期発見・早期治療すること、治療を中断しないことが大切です。
また、症状が糖尿病合併症によるものか、そうではない別の原因なのかを調べる必要があります。

気になっている症状があれば、気兼ねなく医師・看護師までお伝えください。